胃腸炎
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは細菌やウイルス、原虫などの経口感染によって起こり、下痢や悪心、嘔吐、時に腹痛や発熱などの症状をきたします。
汚染された水や食物の飲食を介した食中毒として起こる場合や、集団発生する場合もあります。
また、合併症により脱水、電解質異常で、二次的に急性腎不全、ショック、重症不整脈などが起こることもあります。
重症化する症例の87%は細菌性であるといわれています。
夏季に多い細菌性胃腸炎
感染型胃腸炎
感染後1〜4日に起こることが多く、下痢や腹痛、発熱がみられます。
▶︎ 腸炎ビブリオ
夏に生の海産魚介類の食後に起こります。大部分は自然に治癒します。
▶︎ サルモネラ菌
生卵や半生の鶏肉、豚肉などの飲食やペットを介して感染します。
大部分は自然に治癒しますが、高齢者や免疫不全者では敗血症、感染性動脈瘤などの臓器感染を合併し重症になることがあります。
▶︎ 腸管出血性病原性大腸菌(O-157など)
潜伏期:3〜4日、下痢に引き続き血便を起こします。
時に高齢者、乳幼児などに溶血性尿毒症症候群を合併し重症化します。
▶︎ カンピロバクター
半生の肉類の食後に多く、時に血便があり、虫垂炎と紛らわしい場合があります。
大部分は自然に治癒しますが、症状が強い場合マクロライド系抗菌薬を投与します。
毒素型胃腸炎
悪心や嘔吐、腹痛、下痢を呈しますが、発熱は少なく、食後2~24時間後に起こります。
▶︎ 黄色ブドウ球菌
調理人の皮膚の化膿性病変などに由来。
自然に治癒します。
▶︎ セレウス菌
室温に放置された食品を介します。
自然に治癒します。
▶︎ ウェルシュ菌
肉、シチューの再加熱不十分な場合などに起こります。自然に治癒します。
▶︎ ボツリヌス菌
はちみつ、真空パックの辛子蓮根、郷土料理の飯寿司(いずし)、熟寿司(なれずし)などからの感染例があり、潜伏期12〜36時間後に神経毒により複視、視力障害、嚥下障害、構語障害、筋力障害が起こります。
重症化し抗毒素血清、呼吸管理、全身管理を必要とします。
冬季に多いウイルス性胃腸炎
ノロウイルス
ノロウイルスは子供から大人まで、広い年齢層で急性胃腸炎を引き起こすウイルスです。
この感染症は11月から3月の主に冬季に多発しますが、年間を通して患者はみられます。
ノロウイルスは下痢だけではなく嘔吐を引き起こすことが特徴です。
下痢であれば、ウイルスはトイレで流されるため広がりにくいのですが、嘔吐の場合、適切に処理・消毒をしないとウイルスが床に残ります。
乾燥しホコリと共に空気中に舞い上がり感染が広がっていくこともあります。
手指からの感染ばかり気にする方も多いですが、このような感染経路も気をつけてください。
▶︎ 感染経路としては・・・
- 感染者のウイルスが大量に含まれる便や吐物などから直接もしくは二次的に感染する場合
- 調理などを行う食品取扱者が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合
- ウイルスに汚染された貝類(特に二枚貝)を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
- ウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合